ピンナップ・アートはセクシーな女性をモチーフとした20世紀の大衆芸術を指します。二度の大戦を通して、アメリカを中心に隆盛を極めました。
ピンナップのもっとも際立った特徴は、一点の曇りもない笑顔と作り込まれたポージングにあるといえるでしょう。これらの演出は写真作品にも適用され、制作現場では若い女性が整形・エアブラシ・照明などの力で典型的なピンナップ・ガールと化す儀式が遂行されていたようです。
戦闘機の先端にも描かれたピンナップ。ピンナップ・ガールの底抜けに輝かしい人工美は、向うところ敵なしのサイボーグをも想起させる気がします。自我や葛藤を微塵も想像させず、男性の欲望だけを映し出すピンナップは、いわゆる「独身者の花嫁」のポップな一形態ともいえるでしょう。